薬剤師のメソッド

進学、就職、国家試験、転職など薬剤師の人生についていろいろ

【進学】東京医科大学の女性医師問題に女性薬剤師が思うこと。医学部より薬学部が楽だよ【就職】

この平成も終わろうという時代に。いまだ女性差別というものが存在していたのですね、それもフェアで判定されるべきの「学力」というものに関して。

東京医科大学の不正入試問題については、私もうんざりしました。女性医師が働きにくい環境であることは知っていましたが、それにしてもこんなに露骨な操作があるなんて想定していませんでしたから。

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女子がいくらいい点を取っても、減点されるんですねえ…女というだけで。逆に男というだけで、下駄をはかせてもらえる。

医者になりたい男子は東京医科大学を受験したらどうですか?実力以上に加点してもらえるから、医者になりやすいですよ笑

 

女性に限らず、医者はしんどい職業

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わたしは一時期医学部を受験しようか迷っていた時期がありました。そもそも医学部に受かる頭がなかったので結局はあきらめたのですが、医学部、ひいては医師の世界に足を踏み込むとはどういうことなのだろうと、あれこれ調べた経緯があります。親戚にも医者がいたので、聴いてみることにしました。

 

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 しかし医者の労働環境を聞いて「これは無理だ」と思いました。もちろんこのブラックな労働環境でも余裕で働けるスーパーマンはいるのでしょう。しかしそういうのはスーパーマンに任せるべきなのであって、私のような凡人にはとてもじゃないけど勤まらない、と確信しました。

 

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 親戚の友人は某外科系の勤務医なのですが、200連続勤務とかいう意味不明な状況に苦しんでいました。「医者として成長するには今しかないから、働くしかないんだ」といつも言っていたそうですが、今思えばその友人は生きているのか心配です。常に病院に泊まり込みでしたし、家にも帰れていませんでしたし、休もうものなら同僚から「俺たちを殺す気か?」と厳しい目を向けられていました。

 

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 その友人は男性で、それでさえめちゃくちゃ過酷だと言っていたのですから、女性医師が働くにはどれだけ辛い環境なのかは想像に難くないでしょう…もちろん肉体労働が厳しくない診療科の医者になればいいじゃない、という話なのですが、そもそも「医学部」じたいがハードモードの世界です。医者の友人を何人も知っていますが、もうやっぱり、学生時代から、考え方が違うんですよね。段違いでやる気が違います。本気で「患者さんのため」「医療の進歩のため」を考えて生きているので、もう人生のステージが何段階も違うなと痛感させられました。

 

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 そして「自分は医学部を選ばなくてよかった」と心から思いました。だって、そこまで自分に厳しくなれませんから。私はただ、専門職の資格が欲しいだけです。医療を向上させたいみたいな意識の高いことはまったく考えていません。その時点で医学部の人たちとは温度差が大きいと思いましたし、現に医学部の人に説教されたこともありました。

 

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「単位のためにこの講義を取ってる」みたいな発言をしたら「この講義は人体を理解するために最重要なものなのに、適当に聴いたらいいとしか考えないなんておかしい!!医療人としてありえない?!!」とめっちゃ怒られました。周りの医学部生にも白い目で見られました。いっぽう薬学部は、「単位足りてるならどうでもよくない?てか人がどんな講義受けようと勝手だし、いちいち他人に口出しされるのうざいんですけど」ってスタンスが大多数でした。つまり、それだけ温度差があるんです。「医学部はハードで当たり前」なのを、医学部生自身も受け入れているんです。

 

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 まあ医療界のトップである医学部がゆるゆるでは困りますから、それくらい厳しい環境で勉強するのは当然と思いますけどね。

 

医師ではなく薬剤師になってよかった

薬学部を選び、6年かけて卒業し、薬剤師になったわけですが、かえすがえす思うのは「薬剤師の免許を取ってよかった」「薬学部に行ってよかった」そして「医学部に行こうと思わなくてよかった」ということです。負け惜しみとかではなく、本気でそう思います。なぜかというと、医学部の世界は厳しすぎるからです。

 

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 そりゃ薬学部だってしんどいです。なんか知らんけどいつも実験させられるし、レポートは山のようにあるし、実習や学会で走り回るし、教授の小間使いをいつもさせられるし、卒業試験もあるし、楽ではないのは確かです。それでも、「医学部に比べたらすごく楽」です。本当に。医学部の友人は医学部カリキュラムがつらすぎてうつ病などになって病んで消えていく人が大量にいました。そして生き残った「めちゃくちゃ強い人」が「めちゃくちゃ強い医師」になっていきました。

 

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 生存バイアスという言葉をよく聴きますが、医学部や医者についても同じことが言えるんだろうな、と思います。何回もふるいにかけられて、生き残った「めっちゃ強い人」が過酷な環境でも働けるから、医者の労働環境というのはいつまでたっても「過酷を極める」ものなのだろうと思います。男性でさえ超ブラックなんですから、女性医師の世界なんて、想像するのに難くありません。出産や育児という課題を抱えた女性医師をサポートする制度なんて、ほとんどの病院には無いのでしょう。

 

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 ブラック企業の世界がよく取沙汰されますが、それを言うなら医療の世界だってたいがいブラックだと思います。前時代的な常識がいまだにまかり通っている。医者なんていつ休んでるのかわからないほど働いていますし医者自身も「医療のため」とそれを信念にしていますし、そりゃそういう考えの人が多数であれば、労働環境なんて変わるはずもありませんし、一時的に弱者になる女性医師なんて「知るか、働く気が無いなら去れ」ってスタンスになるのです。もう無茶苦茶。

 

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 友人や親せきから医学部・医者のその手の話を山ほど聞いてきた私としては、やはり医学部を選択しなくてよかった、薬学部でよかったと思うわけです。わたしには医療に貢献したいとか患者さんに全力を尽くしたいなんていう思いはありません。ただ当たり前にはたらいて当たり前に報酬を得る、それだけのことをしたいだけです。滅私奉公?知ったことかです。そういう意味では、ハードワーク極まりない医師の世界なんて、勤まるわけはないと思ったのです。

 

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 医者の世界はブラックです。ブラック企業や過労死が話題になろうと、医者は結局ブラックです。だって医者自身も、ブラックであることを望んでいる人が多いじゃないですか。進んで残って勉強して病院に泊まり込む人も多数いるじゃないですか。それじゃあもう、改善しようがありませんよ。現場からそういう声が上がらないんじゃ、手の打ちようがないんですから。

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過労死が取りざたされていますが、実際のところ、医者の世界ではそういうのは無関係でしょう。病院薬剤師でさえハードでなんぼ、薄給でなんぼ、みたいな意味不明な理屈が通っていたのですから、医者の世界なんてさらに、「働け尽くせ動け」と軍隊のような規律が機能していたんじゃないでしょうか。マッチョですよね、医者の世界って結局。ただでさえ強靭な学生が医者になって、さらに強靭な人たちが生き残っていくわけですから、世界のルールとしてどんどん「強い者勝ち」になっていくわけす。そしたら自然と環境はブラック寄りになりますよね。これはもうだめだ~

 

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 私はブラック環境も過労死も論外なので、薬剤師になりました。そしてMRをやってブラックを知り、病院薬剤師でさらにブラックを知り、そして薬局薬剤師で落ち着きました。結果的には、薬剤師になってよかったと思います。だってまかり間違って医学部なんかに進んでしまったら、もう人生全体ブラックを強いられるんですから。いかに高給だろうと、命を縮めたら意味がありません。

 

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医学部・薬学部に迷う学生へ

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特に女性。ぶっちゃけ、本気で医者になりたいわけじゃない人なら、薬学部の方がおすすめですよ。しんどいけど、体力的にハードなわけじゃありませんし。試験も女性蔑視みたいなのは無かったんじゃないでしょうか。特に女性が少ないと思いませんでしたし、むしろ女性のほうが多かったです。そして女子学生は軒並み優秀でした…だからいつもヒエラルキーは女性>男性って感じでしたね。薬学部の男子はみんな去勢されたようにおとなしいです。薬学部女子はたいがい気が強くてプライド高いので、怒らせないように必死なのでしょう。

 

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 薬剤師の世界も、基本的に女性が多いので、医師ほどマッチョな世界ではないと思います。性格悪い女性薬剤師と出くわす、みたいな問題はありますが…それでも医師のように過労死するほど働かされる、女性というだけで「体力が無いから…」「キャリアが続かないから…」という理由で避けられることはありません。女性薬剤師なんて山ほどいますからね。薬剤師の転職広告を見ればよくわかるように、だいたいモデルは女性なんですよね。薬剤師は「女の職業」とみられがちです。

 

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 それが何を意味するかというと、少なくとも医学部よりかは男子優遇のマッチョな世界ではない、ということです。わたしもこれまでで「女性」というだけで嫌な目にあったことはありません。薬剤師の世界が、女性がいることは当たり前だからです。むしろ現場は女性が主導権を握っているところがあるので、男性?Haa?みたいな気質もあります。だから私は薬学部でよかったと思いますねー…女性医者の生きづらさは簡単に想像できるものでしたから。

 

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 ぶっちゃけ、女性が点数操作されるというか、医学部の世界では白い目で見られるというのは、なかば常識みたいなものだと思っていました。だから取りざたされるのも「いまさら?」って感じですし、女性がそれだけ入り込めない環境、それで当たり前、でも人手不足、でも女は体力が無いから医者として戦力にならない、じゃあどうする、ぼんくらでも男子に門戸を開けよう…そういう話になってしまっても仕方ないと思います。

 

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そして女性医者じたいも「そんな環境でも生き抜くのが女性医師として当たり前」と考えているのであれば、そりゃあこの世界が変わることはないだろって思います。マイノリティ当事者が苦しんでいる声をあげないなら、何も変わりません。

 

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 医学部に通っていた女子学生で生き残っていた人は軒並み精神・肉体的に強い人でした。私と比べ物にならないくらい強く、意識が高い人でした。そしてそういう人たちを横目で見ながら「自分は絶対無理」と確信していました。医者の世界は極めてマッチョで、そしてその世界に乗り込んで男に殴り込んでいく女性医師というのも、等しくマッチョにならなければならないのです。そういう世界がもう、自分には無理だなって思った。

 

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 だから、自分が薬学部を選んだというのは正しい判断だと思っています。医者よりはるかにゆるいですからね。女性差別も受けませんし。働くペースも調整しやすいですし。なによりあの「医療のためなら死にます」と言わんばかりの、医療ドラマの世界も真っ青の、労働基準法が裸足で逃げていくような蟹工船じみた世界が、もう、無理です。

 

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 不思議ですよね、ブラック企業にかんしては働き方改革だのプレミアムフライデーだのシャイニングマンデーだの少しは考えかたが進んでいるのに、医療・特に医者の世界に関しては、おそらく50年前くらいから何も変わっていないんじゃないでしょうか?女というだけで蔑視されてきて、出産や育児を「余計なことしやがって」と疎まれて、「女性というだけで医師としての質が悪い」という意味不明な理屈をこねられて。そんな世界で生き残ってきた女性医師というのもきわめて「強い」人たちばかりですし、そういう「強くならざるをえなかった」背景を考えると悲しくなります。

 

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 だから、本気で医者になりたい人以外は、薬学部に行くこともひとつおすすめしますけどね。難易度も差別の度合いも全然違いますから。薬学部の世界で、女子だからってバカにされたりした経験はほとんどありません。というか医学部が明らかに女性蔑視の世界だから、薬学部のほうに流れた女性が多いのでは?と私は疑っています。。薬剤師は一昔前まで「女の職業」でしたからね。

 

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 少なくとも。もし自分の子供が女の子で。「医者になりたい」って言い出したら、まずは医者の酷すぎる労働環境、そしてそれで当たり前と思っている現場の常識を知ってもらってから、判断してもらおうと思います。だって自分だったら絶対医学部行きたくないもん。在学中だけしんどいならともかく、医者になったらさらに強い「女だから」差別を受けるわけでしょう?そんな仕事に就かせたくありません。それなら薬学部のほうがずっとましです。

 

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 女性医師が先進国の中でも非常に割合が低い国、日本に生まれた以上、女性医師として歩む道は、「簡単」であるはずがないのが現状です。そんなにつらい思いをしてでも医者になりたいのなら、好きにやれと思いますが、「そこまでやりたくない」という方には、薬学部に行って薬剤師になることをおすすめします。医者よりは明らかに楽ですよ。特に女性は。