薬剤師のメソッド

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【学費】薬学部に進学して薬剤師になりたい高校生が知るべきこと5【勉強大変】

一昔前は薬剤師過剰飽和でワーキングプアになるとか散々ささやかれていたのですが、結局のところそれは実現せず、相変わらず薬剤師は需要のある職業です。安定した仕事というイメージも保たれているので、今の中高生が目指すことも多いかと思います。このコロナ時代、どんなことが起きるかなんて誰も想像できない世界、専門のスキルを持って生きていくのが有利なのは事実でしょう。何も免許や資格を持たないよりは良いはずです。

しかし、薬剤師は薬学部を卒業しないとなれない職業。薬剤師を目指す前に、高校生、そしてそのご家族が知っておくべきことがいくつかあります。

1.入学は簡単、卒業はベリーハード

まず、薬学部は難しいのか?問題です。結論から言うと大学によります。国公立ならだいたいは高レベルですが、私立はピンキリなので、正直名前が書けたら入学できるのでは?クラスの大学も存在します。つまり、薬学部に入ることだけに絞れば決して高いハードルではないのです。高校時代の成績が必ずしも優秀ではなくても、薬学部に進むことはできます。難しい大学に行きたいと思わなければいいだけです。

 

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問題は入学してからです。まあ講義は難しいし、実験もたくさんあるし、テストは多いし、留年のリスクは常につきまとうし、休む暇が本当にありません。私はポンコツ学生だったので入学後は非常に苦しみました。高校まではなんとかなっていたのですが、大学は本当に勉強ができなくて毎日頭抱えていました。本気で大学やめようと思って、かといってじゃあどこに行きたいのか強いビジョンもなかったので、死に物狂いで毎日やっていくしかありませんでした。若いからやれたんでしょうね…

 

卒業まで楽勝だった、なんて人はほとんどいないんじゃないでしょうか。6年間苦しい思いをしながら課題を乗り越えていかなくてはなりません。遊んでれば卒業できるほかのふわふわした大学生と一緒になってはいけません。間違いなく詰みます。

 

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そして薬学部、特に私立大学は半端なく学生を振り落としていきます。留年生がごろごろいます。毎年メンツが激しく入れ替わります。そして卒業できたとしても、薬剤師国家試験に合格しないことにはどうにもなりません。これの試験勉強もまあしんどいし、大学によっては年単位で試験対策しているところもあります。卒業試験をクリアしないと受験させてもらえない場合もあります。

入学自体は簡単なんです。でもそこからの道が果てしなく厳しく、努力を積み重ね続けないとゴールにたどり着けません。入学すればそれでゴール、他の学部はそうかもしれませんが、薬学部にはいっさい通用しません。それだけは心得るべきです。

 

2.6年間の学生生活、長い

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理系なら大学院に通う人も多いので6年以上はざらかと思いますが、私的には6年はとても長かったです。小学校と同じ年月ですよ?いつになったら卒業するんだろう?と思ってましたし、永遠に大学生なんじゃないか…と遠い目になる日もありました。あと4年制大学を出た友達が社会人になっていくのを見ると、自分が取り残された感がありましたね。よく言えば「若い」悪く言えば「幼い、世間知らず」なところがあります。

 

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前にも言ったんですけど、薬学部6年制、個人的には賛成してなかったんですよね…別に6年になったからといって、当時のカリキュラムは本当に杜撰で、「引き伸ばし」感が否めなかった。実務実習があるのが大きかったですが、正直「まだあるのこれ?」って場面が多かったです。半年もやらなくていいんじゃないか…って…実習先ガチャもあり、パワハラセクハラでトラブル発生したケースも聞きます。

今はどうだか知りませんが、6年制のカリキュラムは私的にはあまり満足のいくものではありませんでしたし、4年のままでもよかったのにな…と思ったりします。6年、長かったんですよね。

 

3.お金がかかる

特に私立大学は本当にお金がかかります。私は「都心一人暮らし、私立、奨学金」コースが本当に詰みだと思うので避けるべきと思っています。お金がかかる条件にも関わらずお金が出せず、奨学金でどうにかなるだろって考えるのは読みが甘いと言わざるを得ません。返済がいらない奨学金ならいいんですけどね。結局奨学金って借金なので、返さないといけないんですよ。何百万も。

 

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知ってる薬剤師は卒業時に奨学金1000万オーバー借りていて、毎月ひいひい言って返しています。年間50万返しても20年かかりますからね。奨学金に関しては高校生ではまだ考えが甘い人も多いと思います。親がどうにかしてくれる場合もありますしね。

せめて奨学金を使うなら、無利子を狙うのがいいかと思います。無利子は成績や家庭の収入状況によるところも多いのですが…有利子は本当にしんどいし、繰り上げ返済しないと損だし、若くして借金を多額背負うのは辛いです。借金は悪いこと、とみんな知ってるはずなのに、奨学金はあたかも良いものかのように広まってるのは首を傾げてしまいます。使わないのが最善なので、一番いいのは親が全額学費を出してくれることでしょう。

 

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最悪なのが学費工面のためにバイトしすぎて学業がおろそかになり留年、休学、退学コースです。もうこうなると何をしに進学したのやらわけがわかりません。優先順位は間違えないようにしましょう。

 

4.高校の理科程度で難しいと言っていては…

厳しい話になりますが、高校レベルでついていけないなら薬学部は厳しいかもしれません。私は高校時代はわりと化学も生物も得意だったのですが、入学後はさっぱりになってしまいました。物理化学や有機化学が本当に苦手で、国家試験の勉強でも一番きつかったのがそこです。得意不得意が人にはあるので薬理が苦手、衛生が覚えられない、とかいろいろあると思います。

ただ言えるのは、高校レベルさえできないのなら、進学後はとても大変ってことです。得意な人でも何度もつまずくんですから、最初から苦手な人なんてしんどすぎます。自分の適性を考えるのも大切かもしれません。入学して最低6年苦しい思いをしなきゃいけないんだから、自分が本当にやっていけそうか冷静に考え、親や先生と相談するのもいいでしょう。

 

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5.薬学部で医学部コンプレックスは埋まらない

これは強く伝えたいです。薬剤師は医師の代わりになりません。医学部に進みたいけど進めなかった、気持ちを切り替えられないまま薬学部に来た人は、高い確率で苦しみます。留年したり、再受験したり、なんらかの形で薬学部から去っていく人は多いです。学年が進むほど「医者の代わりにはならない」現実を直視していくのでしょう。

 

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本気で医者になりたいと思うのなら医学部に進むべきです。妥協して薬学部に来るとつらい思いをしますし、本気で薬学部に来たかった学生に失礼です。薬学部にいてそういう学生を何人も見ました。そしてそういうやつらって、なぜか自分は特別でほかの学生とは違うんだって態度なんですよね。受験失敗してるくせに。まるで自分は医者の卵だからお前ら薬剤師とは最初からランクが違うんだぞ、なんて顔をして薬学部にいて講義を受けているんです。滑稽ですね。

諦めがついた人なら問題ないのですが、医学部コンプレックスをこじらせた人間は男女問わず多くいて、だいたいが薬学部の悪口や「自分はこんなもんじゃない」「もっとうまくやれるはず」と絵に描いたもちみたいなことを言い続けるので、非常に厄介です。こんな陰湿な大学生活を歩まないためにも、「薬学部は医学部のかわりにならない」「医者になりたいなら医学部を目指せ、妥協するな」と言いたいです。

 

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そういえば医学部にも30代で入学する人が結構いました。ストレートで入学、卒業するほうがむしろマイノリティな世界なのではないでしょうか?

医師になりたい夢があるのにそれを隠して薬学部で妥協しよう、と思うのであれば、それは一生ものの後悔になる可能性大です。本当に目指したいものがあるならぶつかってください。決して薬学部では代わりがききません。

 

「なんとなく良さそう」で目指すには…

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私もそうだったのですが、薬剤師って潰しがきくしなんとなくかっこいいし、薬学部に入れば安パイなのでは?と思うのも要注意です。理系が得意だから大丈夫、とも限りません。高校の頃より強いプレッシャーや留年への恐怖と闘いながら、最低6年を生き抜かなければなりません。

現実はシビアで、ぼんやりしていては置いていかれます。自分が努力しよう、先に進もう、よりよい未来をつかもうと動かない限り、大学以降の人生はどうにもなりません。薬学部はもともとの頭脳も当然必要ですが、何より努力や諦めない心が必要となってきます。

進学する前に十分よく考えてください。