私は精神科門前の調剤薬局で働いています。
連日多くの患者さんがいらっしゃいますが、精神科門前ということもあって、ほとんどの方がメンタルになんらかの病気を抱えていらっしゃいます。
もっとも多いのが「うつ病」です。生涯で2~5%の人が罹患するといわれるうつ病。もはや珍しい病気でもなんでもなく、現代病といってもいいでしょう。
それでは、どのような方がうつ病にかかりやすいのでしょうか。
仕事のストレス、家庭の事情など、要因は多数考えられますが、本人の性格としては、どのような性格がうつになりやすいと言われるのでしょうか。
メランコリー親和型という、うつになりやすい性格
昔から知られている話として、「メランコリー親和型」に分類される性格の方は、一般的にうつ病になる確率が高いとされています。
うつ病になりやすいとされている 『メランコリー親和型』という性格 - うつ病治療ネット 公式ブログ
ちなみにメランコリー=ゆううつ、晴れ晴れとしない気分、うつ病…などの意味を持ちます。
メランコリー親和型は、以下のような特徴を持つ性格です。
メランコリー親和型といわれてもピンとこないかもしれませんが、
- 真面目、神経質
- 責任感が強い
- 完璧主義
という言葉を聞くと、当てはまる人は多いのではないでしょうか。
今、例に挙げた性格はどれも周りから「良い人」と思われますが、その分
「周りから思われている自分を保たないといけない」 「~じゃない・~しなければならない」と
いうメランコリー親和型の性格になりやすいです。
思い当たる方も多いのではないでしょうか。
同じストレスを受けてもうつ病になりやすい人となりにくい人というのは存在し、それは個人のパーソナリティに由来します。
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かの有名な「電通事件」でも、自殺した社員が「メランコリー親和型」の性格であったことが裁判の論点として挙げられていました。
[事例1-1] 長時間労働の結果うつ病にかかり自殺したケースの裁判事例(電通事件):事例紹介|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(うつ病・自殺対策を含む)|厚生労働省
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パワハラ、いじめなどの負荷を受けてもぴんぴんしている人もいれば、精神疾患に発展するほど強いストレスを受ける人もいます。
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この世はストレス社会です。ストレスから身を守り、うつ病に苦しめられないために、自分の「性格」もある程度はコントロールすることが、社会人として生きていくためには有効な手段になります。
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うつになりやすい性格と、その対策
責任感が強すぎる
引き受けた仕事は絶対にまっとうしなければならない……依頼主よりも自分自身が強いプレッシャーをかけてしまい、そのストレスで心身を壊してしまう。責任感が強いことじたいは社会人として良い資質ですが、その傾向が強すぎると、自分で自分の首をしめてしまいます。
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「自分の仕事は自分がやらなければならない、この仕事ができなければおしまいだ」そのように追い詰める必要などありません。会社なんてあなたの代わりはいくらでもいますし、誰かが休んだって仕事は回ります。強すぎる責任感は、自分の身を壊します。
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「自分がいなくたってどうにかなるや」くらいに考える練習をしておいたほうがいいでしょう。
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他人に仕事を任せられない
このような人は「自分でやるほうが速いから」「人に仕事をやらせるのは申し訳ないから」といって、自分で大量の仕事を抱え込む傾向があります。そして、上司が気づくころにはとても一人では処理しきれないような量の仕事にあふれてボロボロになっているのです。
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これは前述の「責任感が強すぎる」にも通じます。責任感が強すぎるので、「自分の仕事は自分でやりとげなければ」「他人にやりかけを任せるなんて、無責任なことはできない」という思考に陥ってしまうのです。
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他人に仕事を任せるのも、仕事のうちです。結構みんな、忙しそうに見えてひまなんですよ。一所懸命仕事しているふりしている人だっていますよ。私も、同僚が熱心にパソコンで何か調べているなと思っていたらツイッター廃人だった…なんてことがありましたから。
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どうせ昇進したら、嫌でも他人に仕事を任せなければならなくなります。そのときの練習だと思って、「どれくらいの仕事を頼んだら周囲は嫌がらずに動いてくれるか」をチェックしてみるのも良い経験です。
完璧主義
「とにかく100%のプロダクトを提出しなくては」「いい加減な仕事は絶対にできない」と、自分に掲げるハードルが高すぎるタイプです。職人気質のそのこだわりは大変すばらしいですが、細部にこだわりすぎて納期を守れなかったり、毎回毎回そのクオリティを維持しようとするあまり心身を壊してしまっては元も子もありません。
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基本的にプロダクトの提出やメールの返信などは、早いほうが好まれます。食い違いなどがあっても、レスポンスが早ければ修正はききますからね。時間ぎりぎりとか、納期オーバーに提出してこられても、「うわ、これ最初に言ってたのと内容が微妙に違うんだけど…でも修正依頼かける時間残ってないわ…」となってしまいます。
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「自分にとっての完璧」と、「相手が望むハードルの高さ」はしばしば異なります。自分にとっての仕上がりに固執しすぎず、まずは相手に「こんなもんでどうでしょうか」と提示するスピードを重視してみるのがいいでしょう。
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仕事を生活のすべてにしている
家と職場の往復。頭の中はいつも仕事のこと。体は「職場に向かっている」か「家に帰っているか」のどっちか。
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極端な生活を送っていると、人間は病みます。そして、「心を揺さぶるような刺激」がない生活を送り続けると、心は感動にとぼしくなり、セロトニン、ドパミンなどの神経伝達物質の分泌もにぶり、やがてうつ病になります。
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心を揺さぶるような刺激というのは、おいしいものを食べたり、親しい人と語らったり、映画や本、音楽、絵画を見て感動したり、スポーツで体を動かしたりする経験です。もちろん仕事でもそのような刺激を得ることは可能ですが、「娯楽」と同等のエクスタシーを仕事で得続けることは、果たして簡単でしょうか?
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私は「仕事が趣味」という考え方をすべての人に押し付けることは危険だと思っています。「仕事は楽しまなければならない」という固定観念を抱いてしまってはそれこそ心を病んでしまうからです。
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だからおすすめしたいのは、生活のすべてを仕事にしないこと。
平日の少しの時間でも、「家」と「職場」以外の時間を設けること。
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なんでもいいです。カフェに行ってゆっくりお茶をするのでもいいです。レイトショーで映画を見てもいいです。ネカフェで漫画を読んだり、ジムで運動したり、友達と飲みに行ったりするのもいいです(できれば相手ありきより、一人でもできる娯楽をおすすめします。日常的なことなので)
単調な日々は、確実に人を疲れさせ、簡単な負荷で心が折れるようにしてしまいます。
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責任の小さかった学生時代と違って、社会人をしているとやるべきことは多いですし、自然とストレスは積み重なります。
ストレス耐性が強い人というのは、日々のストレスを上手に発散し、気分転換の努力をしている人です。
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決して「さぼっている」「なまけている」なんて思わないほうがよいです。仕事一辺倒の生活は本当、社会人生命を縮めてしまいます。(個人的にはタバコ休憩はあんまり好きじゃないですがね)
「まだ大丈夫」と勘違いしていませんか
人間いろんなことの判断を間違えがちですが、特に「健康面」は難しいです。体の病気でも難しいのにうつ病のように「見えない」「心の病気」とされるものを自覚するのは非常にむずかしい。ただの疲労と思いがちですし、「ちょっとしんどいけどこれを乗り越えたら大丈夫なはず」と楽観的に見積もりがちです。実際はギリギリどころか既にアウトなのに自分になかなか「もうだめ」と判定しづらい。これは難しいことです。
第一、メンタルクリニックと言う場所に偏見を持っている方がいらっしゃるのも事実でしょう。ひと昔前よりは認知もされてきましたが、それでも「頭の病院なんて不気味」「薬をたくさん飲まされる」って思い込みを持たれることもあります。それで初診が遅れてしまい、症状が悪化したところから治療開始…となることもしばしばです。
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病院が怖いという気持ちもわかります。しかし放置して更に悪化することの方がより怖くないでしょうか?自然放置や自己流で治ることもたまたまありますが、素人の処置ではどうにも頼りありません。「精神科の薬は製薬会社の陰謀」と言われたりもしますが、その薬がたくさんの人を助けていることは確かです(寛解に成功するかはケースに寄りますが)
自分だけは大丈夫と言う思い込みは危険です。誰の身にも危険はふりかかってくるのです。「まだまだやれる」「もっとがんばれる」そうやって自分を追い込んでいるときが一番危険です。
ちゃんと休めていますか?
リラックスできる環境が家庭にない
特に一人暮らしの方に多いです。家、リラックスできますか?ちゃんとお風呂に入っていますか?夜は眠れていますか?
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日々の心身の疲れを取り除かないと、確実にストレスが積み重なり、健康レベルは落ちていきます。特に睡眠不足は大敵です。最低でも1日7時間以上は確保してください。睡眠不足は、思考力と判断力を著名に低下させます。私は寝つきが悪い時はよく「グリシン」のサプリメントを飲むようにしています。
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また入浴習慣も大事です。湯船に入ってゆっくりと体のこりがほぐれていくのを感じながら、お風呂を楽しみましょう。シャワーばかりでは芯から体があたたまりませんし、疲労も取れません。これからの寒い季節、さまざまな入浴剤を使って心も体もリラックスさせましょう。
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私は「クナイプ」のバスソルトを強くおすすめしています。安眠には「ホップ&バレリアンの香り」が最適です。ちょっと癖のある匂いですけどね。
いまやうつ病は「心が弱い人がかかる病気」なんていうのは過去の認識であり、少し気を抜くと誰もが罹患する可能性を秘めた病気です。
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ストレスにさらされることが多い現代社会、必要なのは自分で自分の体を守ることです。ハラスメントや過重労働など頭を抱えたくなる問題は多々ありますが、自分が「うつになりやすい」性格かどうかよく見極め、防衛策を積極的に採用していきましょう。
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つらいときは早めに医者にかかってください
まだ大丈夫、と思っている間に気づいたら重症化してしまうことも多いです。
眠れないのに、食事ができないのに、「これくらいなんともない」と思っていたら、本格的にうつ病を悪化させてしまう場合もあります。仕事が忙しすぎる場合もそうですし、暇すぎる場合もそうです。
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他人と自分を比べる必要はありません。他人はがんばっているのに自分ががんばれないことを気に病む必要はありません…それぞれ、違うのです。誰かが耐えられることがあなたが耐えられるとは限らないのです。それを認めないと、一生苦しい人生になります。
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会社がホワイトかブラックかは、ネットなどでよく評判を聞きますが、実際のところ、入ってみないとわかりません。明らかなブラックは論外ですが、「長時間働く代わりに給料は高い」「給料は安いが休みは多い」…何をよしとするかはその人の価値観によって変わります。
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ひとつ言えるのは、あなたにとってしんどいのならそれはあなたに合った職場じゃないってことです。早めに手を打つことも重要です。だらだらと長引かせるのではなく、はっきりと「対策を打つ」決断をすることも大切です。
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生きていく中で、正解はありません。しかし、健康だけは失ってはなりません。健康と引き換えにする仕事なんてありません。どうかこれだけは間違えないでください。自分の心身を損なってまで仕事をする意味などありません。「打たれ弱い」とか自分を責めないでください。誰だって病気になるときはなるのです。
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怖いかもしれませんが、近場のメンタルクリニックに行くことも考慮してください。そして転職サイトに登録して、「逃げ出す」準備もしておきましょう。
当たり前の生活を送れることが幸せであり、健康である当然の日々が幸せであるのです。そういうことを実感するのは、いつも「失ってから」です。どうかそうなる前に、対策をとってください。