薬剤師のメソッド

進学、就職、国家試験、転職など薬剤師の人生についていろいろ

【私立】学費が高い薬学部の就職活動。給料を取るかやりがいを取るか?【病院薬剤師】

薬学部は学費が高い。

このブログでも散々言っていることです。国公立ならともかく、私立大学は本当にむしりとっていく。進級したいだろ?卒業したいだろ?免許取りたいだろ?そういう声が聞こえてくるかのような勢いで、学生から搾り取っていきます。一部の堅実な学校を除いては、薬剤師養成学校に堕ちてしまっているのが、私立薬学部の実情じゃないでしょうか。

そんな厳しい条件で生きる薬学部が、就活をするにあたって、なにを考慮すべきでしょうか。

 

 

薬剤師は医師ほど稼げない

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薬学部に入ってしばらくすれば誰でもわかることかと思いますが、薬剤師と医師には絶対的な格差があります。これはひっくり返せません。

薬剤師に権利を!と唱える人もいるかもしれません。私もそういう人を知っています。

しかしそういう人は、結局医学部に転部してしまいました。考え詰めた結果、「薬剤師が医師と同等、それ以上になることは現実には無い」ことにたどり着いたからです。 

 

冷静な判断だと思います。医師と薬剤師を混合して考えた結果、学年が上がるごとに悩み、薬剤師になっても葛藤する人はたくさんいます。実は口に出さないだけで結構いるんじゃないでしょうか?

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社会に必要ない職業なんてありませんし、どの仕事が欠けても世の中は成り立ちません。薬剤師は立派な職業です。

ただし、医師ほど稼げると勘違いしているのであれば、それは訂正すべきです。責任も労働量も全く違うのに、医師と同レベルを求めるのはおかしな話でしょう。

 

薬剤師になりさえすれば、今の貧しい生活から脱却!…というわけではありません。むしろ社会人が板につくにつれ、慎ましくなっていくのではないでしょうか。家庭を持ったりすればお金はいくらあっても足りません。薬剤師の給料程度では、とても賄えません(ライフスタイルによりますが)。 

 

 

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薬剤師になればお金持ちになれる。それは幻であると、最初に知ってください。薬剤師にあるのは「安定」だけです。それもいつまで続くかわかりませんが…

昨今ではアマゾン薬局の到来により、町の調剤薬局がどこまで生存できるのか怪しくなってきてもいます。ただ漫然と調剤して服薬指導してるだけで薬剤師として成立できる、そんな時代は終わりつつあるのでしょう。当たり前にプラスアルファができる仕事を普通にできる薬剤師が今後の時代を生き残っていくのは想像に難くありません。それはお金のためでもやりがいのためでもなく、自分が職業人として生き残っていくための切実な問題なのです。やるしかありません。薬剤師として生きていくには、自分をアップデートするしかないのです。

 

稼ぎたいなら製薬会社、ドラッグストア

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就職先としてお金を求めるのであれば、おすすめするのは製薬会社です。とくに営業のMRです。研究開発ほど難易度は高くありませんし、採用人数も多いです。そして給与も高い。

 

営業の労働環境が良いとは必ずしもいえませんが、心臓強い自信があるのなら、MRは適職かもしれません。全国転勤とかあるし、病む人多いですけど…並以上の給与と福利厚生があるので、お金に困ることはまずありません。「強い」人材である自信があるならおすすめです。

 

ちなみにわたしはMRでしたが速攻病んでやめました。向き不向きはやっぱりあります。会社じたいは良かったのですが、営業というものが致命的に私には合いませんでした。本当に適性はよく考えたほうが良い。

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研究開発も良いのですが、なんせ競争が激しいです。採用人数は少ないわりに、応募する人数は多いし学歴などのスペックが高い。外国からも応募者はいますし、厳しい戦いになるわけです。

並の学生では簡単に振り落とされてしまいますし、万が一入社できてもその中でやっていきづらいとこはあるかもしれません。異動も頻繁にありますし…スペックに自信があるなら、研究開発に挑むのもありです。福利厚生は良いですし、「薬をつくる」やりがいを感じることができます。

 

 

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製薬会社以外にはドラッグストアも良いでしょう。労働時間は長いですが、給与は良いです(薬剤師手当も高い)。ただ、入るところを慎重に選ばないと、ブラックに間違えて入社したら悲惨な生活になってしまいます。

知人はブラックドラッグストアに入りましたが、ワンオペ薬剤師に疲れ果てて1年もせずに異動しました。そのへんがしっかりしているところに行くべきなのは、言うまでもありません。

 

アルバイトで済めば片付く話ですが、正社員ですと休みなしで毎日毎日働かされて心も体もぶっ壊れるケースがざらです。評判の悪い会社はだいたい中身も同じなので、知名度だけで安易に選ばない方がいいでしょう。

 

 

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やりがいと専門性なら病院薬剤師

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このブログでさんざんディスっている病院薬剤師ですが、もちろんいいところもあります。先端医療を学びたいなら大きい病院に越したことはないし、幅広い薬を知りたいなら、総合病院などが良いでしょう。そのぶんハードなのはいうまでもありません。

 

また専門薬剤師になりたければ、現状、病院薬剤師をやるほかありません。専門薬剤師めあてで病院を志望する新卒も多いです。薬剤師飽和の時代がゆくゆく来るので、ほかの薬剤師と差別化するために専門性を身につけたい…と…わたしが新卒のころにも同じ考えの人がいました。すぐ転職しましたけど。

 

 

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新奇性と向学心がある人、金銭にこだわらない人、体力気力がある人なら病院薬剤師は勤まると思います。個人的には「新卒で」病院薬剤師をやったほうがいいです。なぜなら、若くて体力があるから、頭が柔軟で勉強しやすいから、少ないお金で文句言わないからです。

 

MRから病院薬剤師に転職した人は、多くはその給与の落差に愕然とします。「どうやって生きていけばいいの?奨学金はどう返すの?家賃は?通信費は?…」

いかにMRがお金で恵まれていたかを痛感します。そしてそれが異常な世界であったかを。 

 

 

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病院薬剤師がスズメの涙という異常世界だとしたら、製薬会社もまた、規格外なのです。そのギャップに苦しみたくなければ、病院薬剤師は新卒から経験しておくことをおすすめします。

年齢を重ねるほど、チャレンジに抵抗心が湧き、お金の有り難さを実感し、わざわざイバラの道を進むことは選ばなくなります。

 

病院薬剤師は、たとえるなら、奥地に宝箱がある茨の森。楽をしたい人が選ぶ道でないことだけは確かです。安易に「良いよ!」とは言えません。覚悟が必要です。

 

 

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やりがいってなんなんだろう

やりがいのある仕事をしたい、なんて簡単に言いますけど。やりがいってなんなんだと思いますか?やりがいがあれば他はなんでもいいんでしょうか?やりがいがあれば長時間労働でも低賃金でもいいんでしょうか?それってワタミの哲学に近づいてしまいませんか?

やりがいという言葉で若者を釣って、使うだけ使い倒して、だめになったらポイ捨てする。そういうことは現実としてあります。過去の過労死事件を見ればわかることでしょう。やりがいという言葉を使って人間を人間扱いしない、それがひとつのストラテジーなんです、とくに社長がサイコパス教祖タイプだとよくあるやつです…

お金と時間と健康、これが人生には大切です。これらを奪う仕事なんて「やりがい」って言葉ではごまかせないと思います。「成長できる」とかもそうですよね。意識高い系のあごをくすぐって気持ちよくさせて、そのすきに奴隷の手枷をつける。

「やりがい」「成長できる」「高め合える仲間」……怪しいと思いませんか?少年ジャンプみたいなことを真顔で言っているやつほど胡散臭いと思いませんか?

やりがいという言葉で人間の生活を抑制するやつにろくなのはいません。きれいごとしか言わない職場は選ばないようにしましょう。

 

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何を選んでも大変

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楽な仕事なんてありませんし、なにをやろうとしんどいものはしんどいです。ただ、向き不向きとか、自分のライフスタイルに一致しているとか、そういう条件をよく吟味して、できるだけミスマッチの無い道を選ぶのは大切です。

いくら終身雇用が崩壊したとはいえ、意味の無い転職なんてしないに越したことありませんし、自分に合った仕事を選ぶことは、公私ともの充実に繋がります。 

 

 

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友達は就職先をこうした…とか、そういう雑音にはあまり耳を貸さないほうがいいです。その人にはその人に向いている道がありますし、あなたにはあなたが行く道があります。学校とは違って、仕事は千差万別ですから。

やりたくなければ、薬剤師をやらなくてもいいのです。大切なのは、自分がどうしたいかを、真剣に考えることです。

 

すごく楽な道なんてありませんし、どんな仕事もそれなりに大変です。それでも、後悔しない選択をすることが大切です。就活期間は、自分がどう生きたいかを考える、重要な時間でしょう。

 

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説明会やセミナーなどに行って、いろいろ行動してみてください。自分に向いているかも、と感じたなら、そことご縁があるかもしれません。

「間違えた」と思うかもしれませんし、予定どおりにはいかないかもしれませんが、それもまた人生です。

 

新卒の就職活動は基本的に一度きりなので、無駄にしないように、じっくり考えましょう。