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薬剤師のメソッド

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ファインディング・ドリー ネタバレ感想。ADHD?発達障害?なドリーからハンディキャップとの付き合い方を考える

雑記

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先日、映画館で「ファインディング・ドリー」を観てきました。

夏らしい思い出を特に作っていなかった私でも大満足の出来でした。

海なんて過去何年も行っていませんが、ドリーを見ただけで満たされます。

美しい海の描写、かわいくもユーモラスな海洋生物たち…グラフィックの美しさと迫力には息をのまれるばかりです。

観る前は「ファインディング・ドリーって子供向けの作品なんじゃないの?」と思っていましたが、心配無用です。大人でもしっかりと楽しむことができます。

むしろ大人が見るからこそ考えさせられる部分もありました。それがドリーをはじめとする、本作の登場人物が抱える「ハンディキャップ」に関する部分です。

短期記憶障害やADHDを思わせるドリー

本作の主人公、ナンヨウハギの女の子のドリー。彼女は前作「ファインディング・ニモ」にも登場していますが、とにかく「忘れっぽい」のが特徴です。

 

「あたしドリー。なんでもすぐに忘れちゃうの」というセリフからすべてがうかがえます。とにかくすぐに忘れてしまう。人と話したことも忘れてしまうし、さっきまで自分がやろうとしていたことも忘れてしまう。

 

あげくのはてに子供のころに生き別れになった両親のことまで忘れてしまいます。マーリン・ニモ親子と暮らすうちにふとしたきっかけで両親のことを思い出し、「自分にも家族がいるんだ」と気づいたドリーは、家族に会うべくグレートバリアリーフを飛び出して海の旅に出る…ストーリーの大筋はこんな感じです。

 

ドリーは忘れっぽく、しかも不注意。関心が向くままに行動し、よく言えば「チャレンジ精神がある」悪く言えば「向こう見ず」な女の子です。後先を考えずに突っ走ってしまうのでしょっちゅうマーリン親子とは離れ離れになります。

 

ひとりぼっちになって困っているところを、ハイスペックひきこもりタコのハンクや、視力の弱いジンベエザメのデスティニー、エコロケーション能力を失ったシロイルカのベイリーに助けられ、なんとかピンチを乗り越えます。

 

目に入ったものにすぐに飛びつき、飛びついた後はほかのことを忘れてしまい、行動力は高いものの計画性がないので周りの人間は困惑してしまう……

 

どうもドリーのキャラクターは、「忘れっぽい」だけではなく、「ADHD」の性質も備えているのではないか?というのが、鑑賞した時の正直な感想でした。

 

まくしたてるようなしゃべり方、ついこの前まで自分が言っていたことを忘れてしまう不注意さ、目標を見つけたら猪突猛進な行動力…典型的なマンガ主人公キャラクターの性質を備えているドリーですが、「左に二回曲がって右」を覚えられないあたり、現実でもADHDの性質を抱えて苦労されている人たちの様子を比喩しているようにも思えなくもないです。

 

目についたものにすぐにとびかかる衝動性、興味の対象が次々と変わる移り気、気に入ったものには異常にのめりこむ集中力の高さ、しかしひとたび何かが気になると別の何かが頭からいなくなってしまう…

 

ドリーの性格は、ADHDをはじめとする発達障害の性格を示唆しているように思えます。興味深いのは、ドリーの性質をドリーがどう克服するか、というより、周りのキャラクターがドリーとどういう冒険をするか、という点でしょう。

 

振り回されるマーリン、徐々に考え方を変えていくハンク…自分が持つハンディキャップを自分がどうとらえるか、「他人」はどう彼らに接するのか。

この映画を見ていると、コミュニケーションについて考えさせられます。

 

ADHD当事者はもちろんのこと、そういった人たちの周囲にいる人たちがどのように彼らと共生していくのか。この映画を見ると、考えさせられます。「本人の頑張り」「努力」だけでは解決しないことはたくさんあるんですよね。周囲の人間が、相手のハンディキャップをどのように理解し、彼らが困ることをどのようにカバーするのが、お互いにとって望ましいのか。ドリーと周囲のキャラクターの関係は、現実世界にも応用できる話だと思います。

 

ファインディング・ドリーはハンディキャップとの物語?

そもそもこの物語、前作の「ニモ」のころから思っていたのですが、「ハンディキャップとの本人・周囲の人の向き合い方」をテーマに扱っているように思えてなりません。

 

前作の主人公「ニモ」は先天的に片方の胸鰭が小さく、うまく泳ぐことができません。これが身体障碍者のメタファーであることは明らかですし、ニモの将来を案じて過保護になるマーリンの姿は、「この子はちゃんとやっていけるだろうか」とハンディキャップの子を育てる親の心境とリンクします。

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実際、「ドリー」でも、あまりに忘れっぽいドリーのことを陰でお母さんが「あの子は大人になっても大丈夫なのかしら」と嘆くシーンがありますよね…このあたりは魚の話でもなんでもなく、「ハンディキャップを負った子供を持った親が思うこと」として人間の心境を如実に表しています。

 

この前のズートピアの白人・黒人差別問題や、女性差別問題など、米国のアニメというのは差別問題をチャレンジングにモチーフに使っている印象があります。

 

(日本にも「のび太」「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」のような個性豊かなキャラクターがいますが、昔に比べるとキャラの尖り具合は抑えられていると思います。彼らのドジなキャラクターは、初期に比べるとずいぶん是正され、今では平均的ないい子のように見えます。のび太に対するドラえもんの毒舌も、最近はめっきり聞かなくなりましたね)

 

ニモ・ドリーに限らず、周囲のキャラクターについてもそうです。

 

ひきこもりハイスペックタコのハンクは、なんだかんだでドリーを要所要所で助けてくれるとってもイカしたキャラクターなのですが、彼は足が1本足りません。人間の子供のせいで足を失ったトラウマゆえ、人間から離れた水槽の奥でひっそりと暮らしたいという願望を持っており、その夢をかなえるためにドリーと協力します。

 

またデスティニーは目がよく見えないのでしょっちゅう壁に頭をぶつけますし、ベイリーはシロイルカなのにエコロケーション能力がありません(のちに復活します)。あと、アシカにもすごくぼんやりしたやつがいましたね。

ほかのアシカ2匹に怒られてはしょっちゅう岩場から落とされています。そして意思疎通がやりにくいけど「目を合わせると」気持ちが通じるらしい?鳥のベッキー。

 

登場キャラクターはなにかしらの障害を抱えており、それゆえに屈折したところを持っているのですが、ドリーとの出会いで一致団結し、それぞれの力を発揮してハッピーエンドに向かいます。

 

どうも「ニモ」「ドリー」を通じて、「ハンディキャップとの向き合い方」考えさせられざるをえません。

 

ひとりぼっちだと果てしなく危なっかしいドリーが、マーリンやハンクなどの支えによりピンチを乗り越えていく場面や、「自分ならどうする?目に入ったものから考える」と自分の生き方を見つめなおしたドリーが、砂浜に敷き詰められた貝殻の道に気づき、両親との再会に成功するシーンなんかは、「人に助けられることで人は生きていける」というメッセージを感じずにはいられません。

 

個人的に一番うるうるきたのは家を取り囲むように貝殻の道を敷き詰めたドリーの両親のシーンですね。仲間たちから「死んだ」と思われてもなお、娘の帰りを信じて、娘が好きな貝殻をたどって帰ってこれるように、毎日貝殻を集めて敷き詰める両親のことを思うと家族愛に感動させられます。

 

そして、助けられてばかりだったドリーが、ほかのキャラクターを突き動かしていく場面もいいですよね。後ろ向きで子供大嫌いで海に帰るのも断固反対だったハンクが、「人生で一番素敵なことは偶然起きるのよ」とドリーに諭され、グレートバリアリーフでドリーたちと仲良く暮らし、あまつさえ子供たちの先生を務めているところなんて、まさに胸熱です。

 

この「人生で一番素敵なことは偶然起きるのよ」っていうドリーのセリフ、忘れっぽくて衝動のままに生きるドリーだからこそ言えるセリフで、とっても素敵です。計画的かつ悲観的に生きるハンクとは対照的なドリーの考え方。このバディはとってもお似合いですね。

 

ハンディキャップを否定せず、どうすればともに生きられるだろうか

「ニモ」「ドリー」からは、ハンディキャップを持つ本人、そして周囲の人間はどのように生きるべきか、ということを考えさせられます。

 

ニモは「チャレンジド」ですし、ドリーは「ギフテッド」です。それぞれの障害を抱える彼らに対し、マーリンは両作でとにかく過保護です。

危ないことをするな、安全な場所でいなさい、無茶なことはするな、平和に暮らせればそれでいいじゃないか、周りの迷惑も考えなさい…

 

マーリンの考えることは、家族という観点から考えたら至極当然のことです。危ないことなんてさせたくないし、安全に生きてほしいのは当たり前です。

 

しかし面白いのは、ニモやドリーはお構いなしに行動しちゃうところですよね。自分の範囲を自分で決めたりせず、あっちこっちチャレンジしてしまう。そこでもちろんトラブルにも遭遇するのですが、人に助けられ、また人を助ける経験を経て、結果的に人間?としてひとまわり大きく成長することができる。

 

これには「本人の可能性を信じてあげよう」というメッセージを感じさせられました。いつも彼らの才能にふたをするのは他人であり、本人はいとも簡単にそのふたをぶっ壊してしまうのですよね…

 

健常者、定型発達の人間が考える以上に、チャレンジドやギフテッドの人の世界は広く、可能性は大きいのでしょう。そして周囲の人間ができるのは、彼らの可能性にふたをするのではなく、彼らの歩みを応援し、大きな事故を起こさないように近くで見守ることなのではないでしょうか。

 

ハンディキャップを否定するでもなく、過保護にするわけでもなく、本人の在り方に寄り添い、支えが必要な場面では手を差し伸べる。「助け合える社会」というのはきっとそういうものなのでしょう。

一朝一夕には難しいことかもしれませんが、障害との向き合いかたを考えるうえで、「ファインディング・ドリー」は非常に面白い映画と思いました。

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感想(22件)

 

 

今からでも興味のある方はぜひ見てみてください。子供も大人も楽しめる作品です。