いまや街中のいろいろなところに見られるドラッグストア。
医薬品に限らず化粧品、日用品、食料品などさまざまなものを取り扱い、私たちの生活には密接しているお店です。私も日常でよく利用します。近所にあるとコンビニの次に役立つお店と言っても過言ではないでしょう。
そのドラッグストアですが、そこでも薬剤師は働くことができます。ドラッグストアで取り扱う「OTC医薬品」は、第一種OTC医薬品の場合は薬剤師がいる場合の販売することができます。そのため、ドラッグストアで薬を売るには、薬剤師を常駐させておくことが必須なのです。(第一種医薬品以外のOTC医薬品は、薬剤師なしで販売することができます)
薬剤師の進路は多々ありますが、ドラッグストアも選択肢に含まれます。私の友人知人にもドラッグストアに就職、あるいは転職した人は多数います。
その人たちから聞く話によると、ドラッグストア薬剤師はメリットもデメリットも多くある職業のようです。その詳細を以下に記載いたします。
ドラッグストア薬剤師の年収は高い
まずドラッグストア薬剤師のメリットですが、年収が高い。これが一番に挙げられるでしょう。
「薬剤師ならどれも同じなのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、職種によって全く異なります。年収の差は、同年代でもひどい場合は倍以上開きます。
間違っても「薬剤師ならどの職種を選んでも高給取りになれる、お金持ちになれる」なんて勘違いをしてはいけません。
学生のうちは実感がわかないかもしれませんが、お金を稼ぐというのは重要なポイントです。欲しいものが多かったり、貯蓄をたくさん確保したい場合は特にそうです。
生活のためにお金は必要です。やりがいだけで人は生きていけません。
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一般的に言われるのは病院薬剤師の給料は安いです。これは本当です。
一部のわけあり病院を除いて、基本的に病院薬剤師の給料は低いです。「医療について勉強したい」などの志が無いと長続きするのは難しいかもしれません。
現にわたしは給料が安いこと、長時間働かされること、病院内の人間関係が悪いことを理由に転職しましたので…
耐えられる人には問題ないのかもしれませんが、人を選ぶ職業とは思います。なかなかハードです。
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次に安いのは調剤薬局薬剤師です。地方や役職にもよりますが400~500万円程度の年収です。
薬剤師が不足している地方の方が給料が高くなる傾向があります。都会の大学で薬学を勉強して、田舎に帰って薬局薬剤師をして高めの給料をもらう…というのも良い戦略でしょう。
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病院薬剤師では300~400万円程度なのを考えると、薬局薬剤師はまあまあの年収でしょう。女性一人でこれくらい稼げるなら薬局薬剤師はちょうどいいくらいの年収かもしれません。
ただし、住宅補助などの福利厚生が整っていない薬局もありますので、そのへんは就職前によく確認しておきましょう。家賃補助があるとないのでは年間数十万円の差がありますので。製薬会社はそのへん充実しています…。
ただ、薬局薬剤師は安定こそしていますが、「ドカンと稼ぎたい」人には不向きでしょう。昇給があまりないので何年も同じような給料で働くことになります。薬局長などにランクアップするか、薬剤師の需要が高い薬局へ転職することもない限り、大幅な給料上昇は見込めないでしょう。
マンネリズムは薬局薬剤師の大きな敵です。
稼ぎたいなら製薬会社かドラッグストア
病院、薬局で働いている限り、年収1000万円などの派手な稼ぎを得ることはほぼ不可能です。それでは、稼ぎたい人はどこに行くのでしょう?
ひとつは「MR」です。製薬会社の営業です。MRの年収の高さは保証します。
外資系製薬会社でよい成績を上げていれば年収1000万円は現実的な数字です。男も女も関係ありません。稼ぎたいという意欲、コミュ力が高いという自信がある方にはおすすめです。
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製薬会社は福利厚生が整っている会社が多いので、家賃補助も高額出してもらえる会社が多いです。家賃による出費が少ないのは非常にありがたいです。ただし、住む家を限定される(自由に家を選べない)こともありますが…
また、通勤補助も出してもらえます。病院薬剤師などでは、家賃補助も交通費補助も出ない場合がありますので、MRと病院薬剤師では本当に給料の差が大きいです。2倍、3倍は広がることは確実です。
MRほどではありませんが、年収の高い薬剤師の職業があります。それがドラッグストアです。ドラッグストアの薬剤師は年収が高いです。
およそ
MR>ドラッグストア>薬局薬剤師>病院薬剤師のような年収順になります。新卒でも500~600万円得られる会社も多いです。
一年目の年収ならMRを上回る場合もあります。休みは無いかもしれませんが…
とにかく稼ぎたい、お金を貯めたい、という人にはMRかドラッグストア薬剤師をおすすめします。
覚えておきたいのは「薬剤師だから給料が高い」というわけではないということです。職種を慎重に選ばないと、そのへんのサラリーマンより低い収入でこき使われる可能性も大いにあるということです。
もちろん「勉強できる」「やりがいがある」から大丈夫、という人もいるでしょう。そういう方はきつくてもそこに行けばいいと思います。わたしは共感しかねる考えですが。
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ドラッグストア薬剤師の仕事はきつい
年収が高いドラッグストア薬剤師ですが、高い収入には裏があります。私の友人知人にもドラッグストアに就職した薬剤師は何人もいますが、いずれも転職しています。
最初は「ドラッグストアでお金を稼ぐ!」と息巻いていましたが、数年たつうちに「ドラッグストアの仕事はきつい…」と感じるようになり、ほかの薬剤師職に転職しました。
楽ではない、のが実情です。近年は外国人観光客の対応も増えてトラブル多いですし…
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ドラッグストア薬剤師の仕事のきついところは「拘束時間が長い」ということです。
わたしの知人が勤めるドラッグストアは「開店から閉店まで勤務する」のが通常になっていました。8:00開店で22:00閉店……単純に考えれば14時間拘束と言うことです。
もちろん休憩も挟みますが……お店が忙しい場合は休む暇もありません。走り回ります。文字通り、一日中。
ドラッグストアは医薬品以外も取り扱いますし、薬剤師も調剤室にこもっているだけではすまない場合が多いです。
人が足りないと呼び出しがかかれば品出しをすることもありますし、レジ打ちをすることもあります。薬剤師以外のスタッフが十分に充足していれば、薬剤師が一般用品のレジ打ちをすることはまれなのですが……
わたしがよく行く近所のドラッグストアでは、薬剤師が一般用品のレジ打ちをしています。やはりドラッグストアは医療施設であると同時に日用品の販売施設でもあるので、人が足りない場合は薬剤師も借りだされることが多いようです。
ドラッグストア薬剤師のよく口にする愚痴は「とにかく時間が長い。仕事がしんどい。お金はたくさんもらえるけれどそれくらいしかいいところがない」ということでした。
たしかに、調剤薬局だと大病院の門前などでは時間がきっちり決まっている場合が多いですし、MRも拘束時間は長いですが、実は「実働時間」は短いです(病院への移動とか、先生を待つのに時間の大半を使います。MRとは「待つのが仕事だ」と言う人もいるくらいです)その点、ドラッグストアは、処方箋調剤はもちろんのこと、一般医薬品の相談、品出し、レジ打ちなど、常にやることに追われ、店中を走り回っています。このため精神的・肉体的疲労が非常に大きいです。
品出しは体力作業ですから、女性や体を痛めた方にはきついですしね。
また会社にもよるでしょう。大手ドラッグストアだからといってホワイトか?それは意見が別れるところです。名の知れた会社がブラックというのはよくある話です。
よく考えてみてください。勤務地から家がドアツードアで1時間かかるとします。
8時開店のドラッグストアに7時40分に着くために6時40分に家を出る。支度に1時間かかるとしたら5時半起きです。
そして8:00~22:00まで働き詰め。近隣の病院やクリニックからはひっきりなしに患者さんが来て、22:00を過ぎてもまだ診療しているようであれば、その患者さんを待たなければなりません。
やっとこさ調剤と服薬指導を終えたと思ったら、そこから薬歴作成。22:00閉店でシャッターを閉めたとはいえ、それで従業員の仕事が終わったわけではありません。店のミーティングが深夜に開かれる場合もありますし、1時間ほど残業して23時にようやく解放されたとします。
終電も近くなったころの電車に乗り、24時帰宅。夕飯を食べる暇もなかったので何かを胃に流し込んで、シャワーを浴び、適当にうだうだとしていたらいつの間にか1時。
明日も早いのですぐに就寝。1時に寝ても、次の日に起きるのが5時半。
睡眠時間は四時間半……。
私は薬剤師以外でもドラッグストアで働いている人を知っていますが、もう見るからにやつれきっていました。
「休みの日も普段の疲れをとるためにとにかく寝ることしかできない。お金こそたまるものの使う余裕がない。とにかく体が痛い。整骨院にもマッサージにも通っているが体調がよくならない」と愚痴をこぼしていました。
その結果、彼は退職し、別の業界に転職したようですが…
このように、ドラッグストアでの勤務は、年収こそ高いですが、決して楽な仕事ではありありません。シフト制のお店もありますが、オープンからクローズまでやらされる店もあります。シフト制ならまだましですが、開店~閉店までやらされる店舗だともう最悪です。
一日の半分以上を業務につぎ込むことになるので、相当な体力と精神力が必要になります。薬剤師は注意力が求められる仕事なのに、疲労で調剤ミスなんて起こしてしまったらとんでもないです。
ひとり薬剤師をやらされる店舗も
人が足りていない店舗では、ひとり薬剤師をやらされる場合もあります。調剤事務さえいません。すべての業務、薬剤師ひとりでこなすことになります。ほかの店からヘルプをよこすこともできるでしょうに、いったいどういう了見でひとり薬剤師をやらせているのか訳が分かりませんが……
基本的に調剤する薬剤師と監査する薬剤師のダブルチェック体制があるのが普通ですが、ひとり薬剤師の店舗では、そういったこともできません。自分で重々確認して、間違えていないか何度も何度もチェックしてから患者さんに薬を渡します。そういった店舗は、残念ながら調剤ミスの可能性が非常に高いです。
わたしが昔行ったひとり薬剤師の薬局では「違う人のお薬手帳を渡す」「14日分が21日分だった」「違う人の処方で調剤されていた」というようなミスが頻発していました。まだ経験の浅い薬剤師ばかりで構成されていた薬局だったので、誰が一人の場合もミスが発生していたのは目も当てられなかったです。どうしてヘルプで人を増やさないんだろうか…
また風邪や忘年会、花粉症のシーズンなどでは、一般のお客さんからOTC医薬品に関する相談を受けることもあります。そのような対応も含めてひとりで業務をこなさなければならないので、ドラッグストアのひとり薬剤師は本当に大変です。
特に麻薬や毒薬などを取り扱っている店舗では、処方箋のちょっとした間違い、あるいは薬剤師側の読み間違いがとんでもない医療過誤を起こしかねないので、恐ろしい話です。忙しいドラッグストアという環境で、ひとり薬剤師を的確にこなしていくのは、想像以上に責任が重く、体力的にもしんどく、精神的なストレスが大きい仕事と言えるでしょう。
「ドラッグストア」という響きだから楽そう、と思うかもしれませんが、それは近隣のクリニックが何を扱っているかによります。
人が全然こなくてのんびりした店舗もあれば、午前に集中する店舗もあり、夜に集中する店舗もありです。なんにせよ、薬剤師である以上、人の命に係わる「薬」を扱う仕事ですので、いい加減な仕事は許されません。どんな職場であれ、倫理観を持って仕事をすることが必須事項でしょう。
それにしても人間なので、限界はありますけどね…
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まとめ
- ドラッグストア薬剤師は年収が高い。順番で言えばMR>ドラッグストア>調剤薬局>病院くらい。店舗を任されるようになれば800~1000万円も見込める。新卒からガンガン稼ぎたい場合にはMRの次におすすめできる職業。
- ドラッグストア薬剤師は、薬剤師業務だけが仕事ではない。品出しやレジ打ちなどに呼ばれることも多い。ただしこれは、店舗がどれほど薬剤師以外のスタッフを確保しているかによる。店舗によっては薬剤師が普通にレジ打ちする。もちろん処方箋調剤や服薬指導も行う。
- ドラッグストア薬剤師は拘束時間が長い。シフト制ならまだしも、オープンからクローズまでずっと勤務、休憩時間もおちおち取ってられない、という店舗も実在する。肉体的労働も多く、タフでないと長年務まらない。
- ひとり薬剤師の店舗は避けた方がいい。他店からヘルプも呼べないような惨状の店も実在する。忙しさで我を忘れて調剤ミス、なんてことが起きたら冗談ではないので、ドラッグストアチェーンの評判をよく聞いて、むちゃくちゃな経営をしている店ではないか確認したほうがいい。
新卒からガンガン稼ぎつつ、調剤も勉強しつつ、肉体的にタフな自信がある薬学生の方には、ドラッグストア薬剤師は向いているかもしれません。あとOTC医薬品の勉強もしたいという方には。
「ワークライフバランスを大事にしたい!」「定時で帰りたい!」「趣味に時間を使いたい!」と言う人にはドラッグストアはおすすめしません。とにかく、拘束時間が長く仕事がハードなのです。
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お金よりも時間、暮らし方、人生の余裕を優先したい方は、ドラッグストアは避けたほうがいいでしょう。まだ調剤薬局の方がおすすめです。これも店舗によりますが……仕事で肉体的にも精神的にもつぶされて参ってしまうよりかはましです。
就職するにしろ転職するにしろ、ドラッグストア薬剤師は「稼げるけど大変な仕事」であることを踏まえたうえで勤めたほうがよいでしょう。十分に事前準備を行ったうえで、悔いのない就職をしてください。
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